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退職勧奨はどの様な言い方をすべき?違法にならない進め方を解説

 経営者のみなさん、社員様を大切にしていらっしゃいますか。私は、従業員を我が子のように思い、同じ目的を遂げるために協働するチームとして、とても大切にしています。そんな従業員に対し、「君はこの会社に向いてないと思うよ。もっと君に合った職場で、君の力が発揮できるのが、君の幸せになるんじゃないかな。」などと伝える。従業員とお別れをする…。とても辛いことだと思います。

 私も、そして私の顧問先も、願わくば、退職を促すような事態が生じないように望むばかりです。しかし、場合によっては、従業員のことを思えばこそ、退職を促す必要があることもあるでしょう。
 今回は、いわゆる「退職勧奨」について、私なりに述べてみたいと思います。

退職勧奨とは?

 そもそも、「退職勧奨」とは、使用者が労働者に対し、辞職や労働契約の合意解約の承諾を促すことを言います。いきなり解雇は会社にとってもリスクがあるし、従業員にとっても経歴にヒビが入ってしまう…。穏便に事態を解決するためのひとつの柔軟な手段です。退職を勧めること、説得をすること自体は、単なる事実行為として、特段問題なくすることができます。
問題は、「やり方」がマズい場合です。最も典型的なのが、「退職勧奨に応じなかったら解雇だぞ」と告知するような場合。終身雇用制を背景に、「会社は1度雇ったら最後まで従業員の面倒を見るべき」という価値観のもと、日本の労働法制では、解雇規制が極めて厳しいものとなっています。つまり、解雇はよほどの事案でなければ、大多数の場合、無効になるリスクを抱えているわけです。そんななかで、「退職勧奨に応じなかったら解雇」などと言ってしまうと、客観的には、厳しい解雇の要件を満たさないということになりかねません。そのような発言をしてしまったとすれば、結果的に会社は労働者に虚偽を伝えて退職を迫ったことになってしまい、退職が無効になることもあります。実際に、このように発言してしまったことがきっかけで、退職が無効になった例もあります(昭和電線電纜事件(平成16年 5月28日横浜地方裁判所川崎支部判決))。「退職に応じなかったら解雇」は要注意です。

 この点からもわかるとおり、退職勧奨は、言葉遣いも含め、正確な知識に基づいて適切な説明・説得が必要となります。ぜひ、きちんとシナリオを用意してのぞむべきです。このシナリオ作成に弁護士もご支援差し上げることができます。

退職勧告の進め方の注意点

 また、事前に、さまざまな注意点を確認しておくべきです。基本的に、退職を促す局面であったとしても、「それが従業員の幸せのためにやむを得ないことなんだ」というスタンスを崩さずに取り組むべきと考えています。そうでないと、たとえば、「やめさせたい」が先行するような事案では、退職を促すため、兵糧攻めをするようなことになりかねません。不利益の大きい配置転換や「追い出し部屋」等の仕事ができない状況を創り出すような事態です。このような、労働者への嫌がらせとも取れる行為は、違法となるリスクが極めて高い。また、長時間多数回にわたって執拗に退職を迫るというのも考えものです。「やり方が悪い」として違法となりかねません。このパターンは、「こいつをやめさせたい」と熱が入ってしまう場合と、「何とかして会社の気持ちをわかってもらいたい、従業員のためだ」と熱が入ってしまう場合の両方があると思います。いずれにせよ、「やり方」が悪いとして違法になるような事態を避けるためにも、注意点を確認しておくべきでしょう。

 「労働者が退職勧奨に応じない姿勢を明確に示したか」も重要です。このような態度の場合にさらに説得を試みることがただちに違法というわけでもないですが、拒絶意思が明確なのに執拗な説得を試みるとすれば、違法と判断される可能性がグッと高くなってしまいます。

 もし、退職勧奨がよくなかったとして、退職そのものが無効になってしまったら、本来通常どおり出勤してもらえていたはずの給与相当額(バックペイ)を支払う必要が生じます。また、よろしくない退職勧奨を受けたという点に慰謝料が発生する可能性もありますから、気を付ける必要があります。

「退職強要」とならないために何ができるか

 適切な「退職勧奨」を行い、「退職強要」とならないために、何ができるか。先に述べた事前準備(具体的なトークを考えておく)はもちろんのこと、反論・意見に対する対応のシミュレーションもしておくべきでしょう。この点、弁護士がお手伝いできるポイントです。

 なお、反論・意見でよくみられるのが、「退職だと、雇用保険の失業給付が、すぐに受給できない。すぐに受給できるよう、解雇扱いにしてほしい」という反論・意見です。私は、これについては安易に応じないようにと指導しています。先に述べたように、解雇となる場合、後から無効となるリスクが高いです。仮に、雇用保険の失業給付が受給できるまでのお金をある程度補償するような形で対応してでも、退職扱いで処理ができるように、説得を試みるべきです。

 退職又は合意解約への承諾をするというのであれば、きちんと書面を残すべきですが、この点も弁護士がご支援できます。遠慮なくお尋ねください。

まとめ

 退職勧奨は、会社からは何とかうまく対応してほしいとプレッシャーがかかり、従業員にはお別れの意向を告げるという、サンドイッチになってしまうポジションであり、非常に負荷がかかります。事前準備、実際の退職勧奨への同行、書面作成、紛争時の対応などについてトータルに対応できるのは弁護士です。

 弁護士と一緒に、この難局を乗り越えていきませんか。

事務所紹介

豊前総合法律事務所 

代表弁護士 西村幸太郎

当事務所では、使用者側(経営者側)の企業法務に注力して業務を行っております。労務トラブル、契約書作成・リーガルチェック、債権回収、クレーム対応、不動産に関するトラブル等でお悩みの方は、当事務所までご相談ください。

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