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2024年問題も近づいています!労働時間の管理について、弁護士が改めて解説!

 「長時間労働だ」「会社のせいでうつ病になった」などといった訴えをされて、長時間労働事案(未払い賃金請求事案)、労働災害事案に発展しているケースが散見されます。そのような事案の場合、私の経験上、きちんと労働時間の管理ができていないことも多いです。

たとえば自己申告制になっている場合、「きちんと申告してくれない」などと、労働者の非を主張する場合もあります。

会社の労働時間管理がきちんとできているか?という指標としては、「『労働基準監督署から、労働時間一覧表を提出してください』と言われた際に、すぐに提出ができるものがあるか」と考えてみるとわかりやすいと思います。実際、長時間労働がらみの労災事案の場合は、労働基準監督署から、これを提出するように言われます。これがすぐに用意できない会社では、今一度、どういう労働時間管理をするのか、再検討した方が良いのではないかと思います。仮に、労働者が時間把握・管理に非協力的であったとしても、把握できなくともやむを得なかったとはなかなか認めてもらい難いと思いますので、「労働者がきちんと申告してくれない」とだけ主張するのが果たして効果的なのかという疑問はございます。

「文句を言うんだったら、労働者がきちんと労働時間を証明すべきだ」という考えの方もおられるかもしれません。一面では正しいのですが、会社には労働時間を把握すべき義務が課されていることから、会社側である程度説明・資料の提出ができないと、労働者が主張している労働時間の計算を一応援用して審理を進めていくということも多いように思います。やはり、会社ですぐに説明できる「何か」ツール・アイテムがほしいところです。

最近の実務では、労働時間がらみの労災事案の場合、労働基準監督署は、当該対象者の労働時間調査だけでなく、事業所全体の労働時間調査も行うようです。つまり、労基署も、それだけ、この問題に注力しているということが言えるでしょう。

長時間労働は、従業員の健康管理にも直結する重要な問題です。未払い残業代、従業員の過労死等、深刻な事態に陥った場合、メディア報道やSNSによって瞬く間に拡散し、企業の深刻な信用リスク(レピュテーションリスク)がもたらされることもあります。

冒頭に述べたように、長時間労働だ、これによって精神疾患を患ったと主張されて労災事案に発展することも、少なくはないと思います。労災が認められてしまうと、労働者から、安全配慮義務違反を主張されて損害賠償請求されるおそれもあるわけですので、かなりのリスクになると思われます。

また、人手不足と言われて久しいですが、求人情報サイト、掲示板、転職サイトなどに長時間労働をにおわせるコメントの書き込みがあったことで、就職希望を辞退する方が出たという事案も目の当たりにしました。「企業は人なり」といいますが、その「人」の採用・育成にも大きくかかわってくる大問題だということができると思います。

では、企業は、どうやって労働時間把握義務を果たせばよいのか。ヒントとして、通達やガイドラインがあります。

(参考:「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」厚生労働省HPサイト)

これらも踏まえつつ,私なりに,労働時間把握のポイントをお話してみたいと思います。

まず、その日の労働の、スタートとゴールをどう特定するか、つまり始業時間・就業時間をどう管理するかという点を考えてみましょう。

典型的かつ比較的メジャーな方法としては、タイムカード等の活用でしょう。タイムカードは、格別不自然ところがなければ、裁判所もとりあえずそのまま参照することの多いツール・アイテムになりますから、考えてみてよいでしょう。

ICカードなどは以前からありましたが、最近は、アプリでの労働時間管理なども行われているようです。スマホを1人1台持たせているという会社においては、スマホアプリで1人1人ログインして自身で打刻できるというシステムを利用しているところも多いのではないかと思います。

タイムカードでの管理が向かない場合(始業・就業で決まった場所に来ないなどといった特色のある事案のとき、リモートワークを導入しているときなど)には、自己申告制も多いですが、この場合は、十分に説明し、申告と実態が乖離しないようにし、労働時間の適切な申告を阻害しないようにしなければなりません。

企業は、労働時間の記録に関する書類を5年間保存する義務があります(労働基準法109条)ので、記録したら適切に保管も必要です。

必要があれば、労働時間短縮推進委員会等も活用するように、というお達しです。

これ以外に、結構盲点になっているかなと思うのは、休憩時間の管理です。たとえば1日8時間労働の方は、1時間以上の休憩時間をとる必要があります。当該1時間の休憩は実際にとれているか?リアルタイムで記録できているか?後からどんなときでも1時間で反映させていないか?などといったことが問題になり得ます。

また、いろいろな事情で、一般的な休憩1時間ではなく、2時間などの別途の時間を就業規則等で定めている場合、きちんと周知をして休憩の取得を促すなどの努力が必要でしょうし、後で「2時間休憩があるとは知らず、1時間しかとってませんでした」という言い分を封じるための施策を講じる必要があります。

さらに、その業種の特有の事情にあわせた管理も検討しなければなりません。

たとえば、訪問介護の場合、始業と終業の時刻を記録すればよいというわけでなく、移動時間は労働時間かどうか(利用者の自宅を訪問するまでの道すがらは労働時間と言いやすいでしょうが、私用で寄り道したらどうなるのか?など、一筋縄ではいかない論点です。)といった問題があったり、訪問先から帰って、次に訪問先まで行く間の時間帯が、労働時間なのか空き時間(非労働時間)なのかなど問題になり得ますので、これらも別途注意して管理する必要があると思います。研修時間、とりわけ自己研鑽と思われるものなどは、労働時間ではない個人の学習の時間なのか労働時間なのか、というのも問題になってくると思います。

業界向けの労働時間管理システムなどもあるようですので、これについては業界ごとに確認していく必要があるかもしれません。

たとえば、訪問介護事業では、「カイポケ」というシステムを利用しているところもあるようです。

労働時間把握・管理に関して、詳しくは、訪問介護事業者向けのパンフレットもあるのでご参考ください。(特に、「Ⅱ」「労働時間及びその把握について」部分)

労働時間把握・管理は、未払い賃金紛争の前提となる、労働時間の認定において、非常に重要になってくるファクターですので、ぜひしっかりと対策を講じておきたいところです。

弁護士や社労士との連携・顧問契約なども含め、しっかりとした事前対策を行っていくことをおすすめしたいと思います。

ぜひ、お気軽にご相談ください。顧問契約のご検討もお待ちしております。

事務所紹介

豊前総合法律事務所 

代表弁護士 西村幸太郎

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